『源とみたての魔導力概論』

 

「さて、みたて。これから『魔導力』に関する講義を始めるわけだが…。

今の所おまえはどの程度知っている?」

 

「ぇと・・・『普遍であり不変』、『生命に反応して状態を変える』、

そして機士にとって大事な『機体の動力である』・・・ってこと位です。」

 

「ふむ、基本はその通りで問題ない。が、その前に一つ。

現在、魔導力とは一種のエネルギー流体である『魔導力』によって生じる

『力』だと考えられている。

そしてこれ以降は『魔導力』はこの流体のことを指すと考えてくれ。

先ず『魔導力は普遍であり不変の物質』という点だが、

これは濃度の差こそあれこの『世界』のどこにでも存在している物質

であるため「普遍」とされ、そして、どんなに『使用』したとしても

その本質は変化しない、これが『不変』ということになる。」

 

「ミナモさん、その魔導力の『使用』について なんですけど・・・。

具体的に魔導力を『使う』って具体的にどういうことなんですか?

機体を動かしてる時だとよく分からないので…。」

 

「この場合の『魔導力の使用』とは魔導力を励起状態にすることを指す。

魔導力は生命の意志に触れて励起状態となり、『意志』の伝達と同時に

周囲への干渉を行なうことが可能になる。」

 

「『意志の伝達』・・・ですか?」

 

「うむ。魔導力という物質は生命の活動に反応して励起状態へと移行する

ことは知っていると思う。この考えによるならば成長、食欲、生存本能

その他諸々の生命の活動が起きる時、大なり小なりその周囲の魔導力は

励起状態へと移行しているという事になる。

そしてどうやら、魔導力はその励起に伴い生命体の『行動』を

実現させるための『手助け』を行なっているらしい。」

 

「・・・???」

「例えば、だ。私がここで「手を振った」としよう。

この行動だけではただ『手を振っただけ』だ。だが、その時私が

『風を起こそう』と言う意志の下に行動を起こしたならば、

魔導力はそれに応え、風は手を振っただけの時からほんの少しだけ強くなる。

また、それが相手を傷つけようと思い行動したのならば、

魔導力はそれを感じ相手の感じる痛みは、ただ手がぶつかった時より、

同じ力でもより痛く感じるのだよ。」

 

「…つまり、機体を動かす時は『機体を動かそうとする意志』に魔導力が応えて

サポートしてくれているから、私たち機士は機体を動かせる・・・ってことですか?」

 

「すまん…たとえが悪かったな。それに関しては少し違う。

厳密に言えば機体を動かす時は『意志』ではなく『無意識』に

応えているのだ。お前も手を伸ばす時に

いちいち『手を伸ばそう』と思っている訳ではあるまい?」

 

「ぅう??…またこんがらがってきました…。つまり、意識的な『意志』だけでなく

『無意識』にも魔導力は反応してサポートしてくれてるってことなんですか?」

 

「うむ、例えば『偶然のめぐり合わせ』って物も、自分の「無意識下の願望」

に魔導力が反応して発生させている場合もあると今では考えられている。」

 

「…ってことは。無意識の願望すらサポートしてくれるなら、もしかすると強い願い

を持てば魔導力がそれを叶えてくれたり…なんて事も…。」

 

「(…その願いの結晶がお前なんだが…)確かにその通り『だろう』、な。

だが、だ。そもそも魔導力の強力な励起を引き起こすほどの強い願いや意志

が在るのならば、魔導力のサポートが無くてもそれなりのラインには到達

できるだろうし…。

魔導力が出来るのは本当に「最後の一押し」になるだろう。

それに、願う事象がこの基本の世界の理からかけ離れた物となればなるほど

必要とされる魔導力は膨大になって行く。それに、一度励起した魔導力は

意志の補助を行なった直後に鎮静状態へと移行してしまうから、膨大な

励起状態の魔導力の保持を行なうことはヒト一人で可能な所業では無い。

正直に言って、アイツがお前を生んだようなことは例外中の例外、だな。」

 

 

「ふむぅ…。やっぱり、そんなに上手く行くわけが無いですよね…。

あ、ミナモさん。魔導力がさっきのような条件下で励起する物なら、魔導力で

行なう『発電』って一体どうやるんですか?まさか…人力?」

 

「『魔導力発電』だな。アレは顕在化アルケメタルとの複合によって

初めて成立するシステムなのだが…ふむ今日は此処までにしよう。

次の講義で魔導力関連の各種技術を扱うという事で良いか?」

 

「了解です、ありがとうございました!」

 

「うむ。では昼餉にするとしよう。

今日は冷麦だ、生姜を取って来ておいてくれ。あと氷も、な」